誘う女 (1995) : To Die For

TVで有名になるという野望に向かって突き進み、ついには夫を亡き者にした悪女の姿を通して、マス・メディアの危険なパワーを痛烈に諷刺したブラック・コメディ風のサスペンス。ヒロインはもとより様々な関係者たちによる証言で物語を再構成する語り口も斬新。90年5月に起こった、22歳の女性教師が15歳の少年をそそのかして夫を殺害させた事件に材を取った、女性作家ジョイス・メナードの長編小説『誘惑』を、脚本を手掛けたバック・ヘンリーが脚色。監督にはガス・ヴァン・サントが当たった。撮影のエリック・アラン・エドワーズ、美術のミッシー・スチュワート、編集のカーティス・クレイトンはサント組の常連。音楽はダニー・エルフマンが担当。

監督:ガス・ヴァン・サント
出演:ニコール・キッドマン、マット・ディロン、フォアキン・フェニックス、イレーナ・ダグラス、アリソン・フォランド、デイヴィッド・クローネンバーグほか。

誘う女 (1995)のストーリー

ニューハンプシャー。物心がつくと同時に「TVに出て有名になる」という決意を持っていたスザーン・ストーン(ニコール・キッドマン)は、大学(専攻はTV報道)を卒業すると、父親の経営する地元のイタリアン・レストランで働くラリー・マレット(マット・ディロン)と結婚する。彼の姉ジャニス(イレーナ・ダグラス)はスザーンのことを冷たい女と言って結婚に反対するが、彼女にベタ惚れのラリーは耳を貸さない。ハネムーン先はフロリダだったが、現地のホテルでTV界の大物たちが会合を開くと聞いたからだ。夫の目を盗んで、熱心に売り込みを始めるスザーンはハネムーンから帰ると、フロリダで仕入れた情報を元に地元のTV局に就職する。雑用係のつもりで彼女を雇ったボスのエド(ウェイン・ナイト)に次々と企画書を提出するスザーン。とうとう根負けしたエドは渋々ながら彼女をお天気キャスターに採用した。ラリーはそんな妻を自慢に思い、全面的に応援する。お天気キャスターでは飽き足らないスザーンは、さらにエドを説得して、高校生たちの実態を描くドキュメンタリーを制作する許可を得た。彼女は恰好の素材として落ちこぼれの3人組、ジミー(フォアキン・フェニックス)、ラッセル(ケイシー・アフレック)、リディア(アリソン・フォランド)と出会う。一緒にハリウッドへ行こうと夢を語る彼女に上昇指向を刺激され、反抗的だった3人も次第に心を開いていく。ラリーは彼女が何をするにも深い理解と愛情を示していたが、仕事に夢中になり家庭を省みないスザーンに、とうとう「いつかは子供を持ち、将来はレストラン経営を手伝ってほしい」と持ちかける。夫の言葉は彼女にショックを与え、彼は目的達成の邪魔になると考えたスザーンは一計を案じてジミーを誘惑し、彼を官能的なセックスで虜にした。リディアも彼女を崇拝し、今では彼らはスザーンの言いなりだ。彼女は夫が暴力を振るうと訴え、ラリーの殺害をほのめかす。結婚1年目の記念日。リディアが持ち出した銃を使って、ジミーとラッセルはラリーの殺害を実行した。番組を終え、帰宅したスザーンは、嘆き悲しむ悲劇のヒロインを演じる。かけつけた報道陣のカメラの行列に自分が注目される瞬間に、スザーンの顔にうっすらと恍惚にも似た表情が宿る。3人は素人犯行を見破られ、スザーンにも殺人教唆の容疑がかかる。だが、裁判で彼女は無罪となり、死人に口なしとばかりに取材陣の前で、夫は麻薬中毒だったと発言。やがてマスコミの前から姿を消したスザーンは、念願だったハリウッドのプロデューサーに会う。しかし、それは息子の死を無念に思うラリーの父親が依頼したマフィアの殺し屋(デイヴィッド・クローネンバーグ)で、スザーンの死体は湖の厚い氷の下に沈められた。

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